「ひびきのAI社会実装研究会」第三期に向かって

Sp_23wagatsuma01.jpg
九州工業大学大学院生命体工学研究科 教授 我妻広明
(2023年4月1日より、ひびきのAI社会実装研究会・会長)

 本研究会は、北九州学術研究都市の三大学の研究者を中心に北部九州の大学研究者が参画し、国立研究開発法人産業技術総合研究所、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立情報学研究所ならびに全国の大学研究者有志、企業等の研究者・技術者らとの連携で2016年より、活動を展開してきた。

 石川眞澄会長の第一期では、「実世界で有効に機能する人工知能応用への追及」「社会実装への深化」「人工知能基盤研究に貢献する技術革新」の三本柱を基本として会が立ち上げられ、企業との意見交換や共同研究が活発に行われてきた。さらに、2022年度からの永原正章会長の第二期では、学会や研究会での情報発信などアウトリーチ活動が精力的に行われ、インド工科大学、国連大学との連携模索など、国際的な展開へも踏み込んだ重要な進展が得られた。

 2023年度、第三期に入り、当初目標を着実に遂行するための、VisionからMissionへの具体化作業、また、これまで試行的・探索的であった企業との共同研究および研究連携を、確実な成果創出に繋げる転機に入るものと考える。そのためのマイルストーンとして、産官学での広範かつ先進的なAI技術・実装手法の情報共有の機会を増やし、現場の難題を抽出するプロセスの確立、またその問題を解決可能な形で分解し、AI技術により再解析可能として、さらには大学研究者らからのシーズ提案に至る道筋をつくることが重要である。その延長線上に、「実世界で有効なAI」「社会実装の実績」「新たなAI基盤研究提案による技術革新」の柱を強化があるものとして、研究会構成員と協力し、ともに尽力する

 

「ひびきのAI社会実装研究会」の目指すところ

ishikawa.jpg
九州工業大学 学長顧問 名誉教授 石川眞澄
(ひびきのAI社会実装研究会・顧問)

【研究会の趣旨】

 近年、深層学習(ディープ・ラーニング)などの人工知能研究が著しく進展し、これまで人が行ってきた仕事を人工知能で置き換えることも含め、産業界や社会を大きく変革する可能性が出てきた。
 このような背景を念頭に置き、先導的な取り組みを行うため、公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)は2016年に「ひびきのAI社会実装研究会」を立ち上げた。
 本研究会は地域や企業と連携しつつ、スマートな町づくりや社会システムづくり、あるいは企業の統轄的技術力強化のため、人工知能技術の動向及び応用分野のニーズや特性を調査し、人工知能技術を地域や企業に導入するとともに、新たな産業創成を模索する。
 その際、単に人工知能技術を導入するに留まらず、地域や企業に於いて人工知能応用の実証実験を行い、更にこれを社会実装にまで深化させることにより、人工知能技術が地域や企業に定着し、その真価を発揮できるものと考えている。

【研究会の構成】

 北九州学術研究都市の3大学の研究者を中心に、産総研、国立情報学研究所、大学等の研究者、企業等の研究者・技術者の参加を予定している。

【研究会の方向性】

  1. これまでの深層学習はややもするとブラックボックス的であり、人が中身を理解できず、人と人工知能システムの共生が困難であった。そこで、人が人工知能システムを理解できることを重視し、両者の特長を生かしつつ、人と人工知能システムが良きパートナーとして協働できる共生社会を目指す。
  2. これまでの深層学習のコンテストでは、ある決まったデータベースという閉じた世界の中で認識率などの学習性能の高さを競ってきた。しかし人工知能の歴史の中では、ロボットなどの知的エージェントが、環境と実時間で相互作用しながら知的に振る舞い、実世界で意味のある結果をもたらすことを探求してきた。本研究会は、閉じた世界だけでなく、開かれた実世界の中でも有効に機能する人工知能応用を追及する。
  3. 単に人工知能応用研究を行うだけに留まらず、人工知能技術の有効性を現場で実証し、更にこれを社会実装にまで深化させることを目指す。
  4. 人工知能応用研究からスタートするが、実証研究及びその社会への実装を通じて、人工知能基盤研究にも貢献する技術的ブレークスルーが出現することも期待する。