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名前 松田 憲
所属先 北九州市立大学大学院マネジメント研究科 教授
プロフィール 1998年 筑波大学第二学群人間学類心理学専攻 卒業
2001年 京都大学大学院教育学研究科教育科学専攻教育認知心理学講座修士課程修了
2005年 京都大学大学院教育学研究科教育科学専攻教育認知心理学講座博士後期課程修了
2005年 京都大学大学院教育学研究科 研究委員(学術研究奨励)
2007年 山口大学大学院理工学研究科 講師
2014年 山口大学大学院理工学研究科 准教授
2015年 山口大学国際創造科学部 准教授
2016年 北九州市立大学大学院マネジメント研究科 教授
研究テーマ ・単純接触効果における新奇性付加の影響
・なつかしさ感情が単純接触効果に及ぼす影響
・選択のオーバーロード現象の生起要因
研究分野 認知心理学  認知科学  消費者行動  マーケティング

研究概要

1.単純接触効果における新奇性付加の影響

 ある刺激に複数回接触することで当該刺激に対する好意度が上昇する現象を,単純接触効果といいます(Zajonc, 1968)。好意度は接触頻度に伴い線形に上昇し続けるのではなく,過度の接触によって生じた心的飽和によって抑制を受けることが考えられます。そこで我々は,刺激接触時に新奇性を付加することによって,刺激への飽きを軽減できるのではないかと考えました。松田他(2014)では,自動車の画像の反復呈示時に,毎回背景が変化する条件と変化しない条件で操作したところ,毎回背景が変化した自動車への好意度は反復接触によって好意度が上昇したのに対して,背景が同じであった自動車への好意度は過度の接触によって飽きが生じて好意度が低下しました。

2.なつかしさ感情が単純接触効果に及ぼす影響

 なつかしさとは,過去へのあこがれや過去への回帰願望をさします。なつかしさの喚起には過去の頻繁な接触とその後の空白期間が必要であり(楠見,2014),なつかしさを感じている状態はポジティブであることが多い(Wildschut et al., 2006)ことから,この感情には単純接触効果の関与が考えられます。一般的に単純接触効果は,同一の刺激を集中的に反復呈示するよりも,他の刺激と混ぜ合わせながら分散呈示したほうが効果が高いことが知られていますが,我々は刺激を集中呈示後に1週間のインターバルを置くことで刺激へのなつかしさが生じ,分散呈示された刺激よりも好意度が高くなることを示しました(松田他,2012)。

3.選択のオーバーロード現象の生起要因

 一般的に,消費者が小売店等で商品を選択する際には,その種類が多ければ多いほど良いとされてきました。ところが近年の研究で,多過ぎる選択肢はかえって選択を抑制してしまうことが明らかになり,これを選択のオーバーロード現象(Iyengar & Lepper, 2000)といいます。この現象は心理学の領域だけにとどまらず,マーケティングや消費者行動の研究領域においても大きな注目を集めました。しかし,その後の研究でこの現象の再現性の低さが指摘されるようになり,現在ではどのような状況であれば選択のオーバーロードが生じるかを示す研究に移行しています。我々の研究グループでも,商品カテゴリーへの関心の低さ(熊谷他,2019)や価格の高さ(顧他,2020),選択肢の希少性(松田他,2021),待機列の存在(松田他,2022)などによって選択のオーバーロード現象が生起することが明らかにされています。これらの一連の研究は,日経新聞にも紹介されました。(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC162ZP0W2A110C2000000/)

自己PR

 主に認知心理学や認知科学の研究を行いながら,それらの知見を用いて消費者行動やマーケティングの研究もしています。