地域DX共創事業「DX LAB KTQ」における共創事例をご紹介します。
ファーストタッチDXラボ様の事例です。
地域内でDXの第一歩を踏み出そうとされている方向けの場を創られているファーストタッチDXラボ様にご興味を持たれた方は、ぜひロボット・DX推進センターまでお問い合わせください。

「DXに最初に触れる場」を楽しく体験 ファーストタッチDXラボの「第一歩」

「DXの必要性はわかるが、何から手をつければいいかわからない」----。こうした「最初の一歩」に悩む企業は少なくありません。2025年6月に始動した「ファーストタッチDXラボ」は、こうした「最初の一歩」に悩む企業を支援するために設立されました。

カードゲームやワークショップを通じて、DXを楽しく体験してもらう。この取り組みを発案した株式会社エンビジョンナッジの清水常平さんと、代表構成員である株式会社アジケの梅本周作さんに、活動の背景と今後の展望について伺いました。

「相談以前」の企業をどう支援するか

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株式会社エンビジョンナッジの清水常平さん(左)と、代表構成員である株式会社アジケの梅本周作さん(右)

――ファーストタッチDXラボを設立した経緯を教えてください。

清水さん: "ファーストタッチ"という名前には、「DXに最初に触れる場」という意味を込めています。

私は、北九州市デジタル相談窓口の専門家として登録しているのですが、相談内容には「メールのやり取りをチャットツールに変えたい」といった、初歩の初歩と言ってよいようなものもありました。

ただ、私はそうした相談を見ていて、「そもそもDXを何からスタートすれば良いかわからない」状態でも相談してきてくれる企業は、むしろ良いほうだと感じたのです。課題がわからないため、相談すらしていない企業の方が、世の中には多いのではないかと考えています。

課題が顕在化している企業に対するソリューションはたくさんありますが、「課題がわからない」「最初の一歩が踏み出せない」という初動の段階を拾い上げてくれる取り組みは、意外と少ないと感じました。

そこで、「もっとライトに、DXは何からスタートしたら良いのか」を分かりやすく伝えられる取り組みができないかと考え、旧知の仲である梅本さんに声をかけて、このラボを立ち上げることになりました。

三つの柱で支える活動内容

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――今回の取り組みでの具体的な活動内容を教えてください。

清水さん: 活動の柱は大きく三つあります。

一つ目は「DXの最初の一歩を、楽しく分かりやすく体験してもらうこと」です。メンバーは、UI/UXの観点からユーザー起点の体験設計を提供している梅本さん、西日本工業大学デザイン学部の中島教授、ビジネスカードゲームのクリエイターでワークショップのデザインも手がける株式会社インスプレースの福田さん、そして私の4人でスタートしました。

私たちは「顧客起点・ユーザー起点で考える」「体験する人が心地よく、楽しく、手触り感を持って学べる場にする」ということを、活動の軸に置いています。

そのうえで、取り組みの初動として「楽しみながらDXが経営に与える影響を体験できる」カードゲームを作りました。このカードゲームでは、「電子契約を導入している会社」と「紙の契約書を使い続けている会社」をモデルにして、お金と人手というリソースが時間の経過とともにどう変化するかを体感できる内容になっています。

たとえば、電子契約を導入する会社は初期投資が必要ですが、処理がスムーズになり人手がかからなくなります。一方、紙の契約書を使い続ける会社はデジタル導入のコストはかからないものの、契約処理に人手がかかり続けます。こうした違いをゲームを通じて実感してもらえるようになっています。

ここで大切にしているのは、「デジタルが常に正解」という話ではなく、楽しみながら現実的な感覚を体験してもらうことです。

二つ目の柱は「ワークショップ」です。「何が課題かもよくわからない」という企業でも、自分たちの業務を付箋などで棚卸しし、業務プロセスを可視化するワークショップを行います。棚卸しを通じて「本当の課題」が浮かび上がり、その中からデジタルで解決できる部分を一緒に考えていきます。

三つ目の柱が、『共創』です。今回のカードゲームはインスプレースの福田さん監修のもと設計したものを、西日本工業大学の学生さんがデザインしてくれました。
当初はカードだけで完結する内容でしたが、「お金」と「人手」をより直感的に理解でき、かつゲームとしての楽しさが増すようにと、3Dプリンターを使ったお金カード・人手カードのガジェット化を学生さんから提案してくれました。その結果、手触り感のある体験が加わり、より"遊びながら学べる"ゲームへと進化させることができました。
このように、私たちだけで完結するのではなく、いろいろな企業や教育機関にもラボに加わってもらい、ともにプロダクトや仕組みを作っていける状態を目指しています。

「何をしたいですか」という問いかけの力

――DXに取り組む企業への「最初の一歩」としてのアドバイスをお願いします。

清水さん: 私は「デジタルはあくまで『手段』」だと考えています。最初の一歩としてお伝えしたいのは、「まず事業として何に悩んでいるのかを言葉にしてみてください」ということです。

社長自身が何に困っているのか、何を実現したいのか。部下とのコミュニケーションの悩みでも良いですし、売上の停滞でもかまいません。そこで整理された事業課題に対する解決策の一つとして、必ずどこかでデジタルが登場すると考えています。

ただ、「DXだからデジタルから考えなければならない」と思い込んでしまうと、視野が狭くなってしまいます。

梅本さん: 私は小さな会社の社長でもあるので、「課題は何ですか?」と聞かれるより「今後どんなことをしたいですか」と聞かれるほうが答えやすいと思っています。「来年、再来年にどうなっていたいですか」と聞かれると、おそらく誰でも何かしらやりたいことが出てきます。

それが目標であり、現状とのギャップが「課題」になっていくので、「今後どんなことをしたいですか」と聞くほうが本音が出やすいと思います。

持続可能な仕組みづくりへ

――活動を進めていくうえでの課題を感じている部分があれば教えてください。

清水さん: 理念やコンセプトには自信がありますが、私自身も小さな会社の経営者ですので、この取り組みを続けていくための運営の仕組みづくりまでは、まだ十分に描けていない部分があります。

ただ、無理に規模を追いかけるよりは、「一緒にやりたい」と強く思ってくれる人たちと、丁寧にネットワークを広げていくことが大切だと考えています。

――今後どのような活動を広げていきたいと考えていますか。

清水さん:まずは、「カードゲーム」「ワークショップ」「共創」の三つの柱をしっかり回していくことです。

カードゲームについては、今後、関心を持ってくださった方々とも一緒に改良を重ねていきたいと考えています。

同時に、ワークショップを重ねていくことで、「どの現場でも共通している課題」を見つけ、方法論として標準化していきたいです。私たちは北九州からスタートしましたが、他地域からの問い合わせもいただいています。今後も「北九州発」でありながら、さまざまな地域と連携していければと考えています。

地域への貢献と今年度の目標

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――この活動が地域にどのような影響をもたらすと考えていますか。

清水さん:この取り組みがうまくいけば、DXに取り組む企業の裾野が広がっていくと考えています。特に、人口が少ないエリアや高齢化が進んでいる地域では、人手不足の影響がより深刻です。そういった地域にこそ、DXを通じた業務の見直しや仕組みづくりが必要です。

北九州という地域でこの取り組みを進めることは、まさにそうした地域課題に向き合うことでもあると考えています。

――最後に、今年度のこの取り組みにおける目標について教えてください。

清水さん: 目標としては、「DXへの興味の裾野を広げること」と「無関心層を、興味を持つ層に引き上げること」です。

そのうえで、カードゲームやワークショップに「触れる人」をどれだけ増やせるか、という点が目標になります。実施回数を増やし、参加者を増やし、「ファーストタッチDXラボ」という取り組みを知ってもらう。それによって、「自分も参画したい」「自社でもやってみたい」という人が増えていくことを期待しています。


地域DX共創事業「DX LAB KTQ」について

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公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)では、令和6年度より地域DX共創事業「DX LAB KTQ」を開始しています。

この取り組みは、北九州地域全体のデジタル化・DX推進のために共創活動に取り組む主体者の発掘から、関係性の構築を目的とした場の提供、共創活動団体の取り組み紹介、課題整理支援や課題解決に向けたソリューション提供企業(IT企業やスタートアップ等)とのマッチング、解決策の共同構築・検証のコーディネートなどを実施します。

この事業を通じ、周囲からの後押しやサポートの輪を広げ、地域内の企業がよりデジタル化・DXに取り組みやすい環境を構築し、北九州地域全体のDXを推進していきます。

これまでの活動については北九州市DX推進プラットフォーム内特設ページをご覧ください。

https://ktq-dx-platform.my.site.com/DXmain/s/meetup/dx-lab-ktq