地域DX共創事業「DX LAB KTQ」における共創事例をご紹介します。
北九州生成AI研究会様の事例です。
中小企業におけるAI活用を進めようとされている北九州生成AI研究会様にご興味を持たれた方は、ぜひロボット・DX推進センターまでお問い合わせください。
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中小企業向け生成AI導入モデルを共創で作る 北九州生成AI研究会

誰もが使える生成AIが登場し、ビジネスの現場は劇的に変化しています。しかし、地域の中小企業の多くは、「便利だとわかっていても、何に使えるかわからない」「ルールがないから怖くて使えない」といった「導入の壁」の前で立ち止まっています。

この現状に対し、「中小企業こそ生成AIを活用すべき」 と語るのが「北九州生成AI研究会」代表、井上研一さん(株式会社VIVINKO 代表)です。人手不足、情報格差、判断材料の不足を克服するため 、同研究会は北九州の地で実践的なPoC(実証実験)を通じた「活用モデル」の全国発信を目指します 。

なぜ今、この取り組みが不可欠なのか。井上さんが見据える中小企業のリアルな課題と、その突破口に迫ります。

北九州生成AI研究会 設立の背景

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――井上さんご自身が、この研究会を立ち上げようと考えた動機は何だったのでしょうか。

井上さん:私自身、特定非営利活動法人ITコーディネータ協会において生成AI研究会のリーダーを務めており、中小企業・小規模事業者向けの「生成AI活用ガイド」の作成を担っています。昨年も、この地域DX共創支援プログラムへの参加を検討したのですが、自社プロダクトの売り込みだけになることを懸念し、参加を見送りました。

しかし今年に入り、周囲から「なぜ去年参加しなかったのか」という声をいただいたこと、私自身が一般社団法人「IT経営コンサルティング九州(ITC九州)」の理事になったことで事務局機能の協力が得られそうになったこと、そして何より「来年では遅い」という危機感を感じたこともあり、「やるなら今年しかない」と決断しました。

ITコーディネータ協会(ITCA)のガイドが完成する2025年9月以降の実践の場として、構成員のさまざまな思いや経験をもとに北九州発で進め、全国のモデルケースを作っていきたいと考えています。

――中小企業にとって、生成AIはなぜ必要なのですか?

井上さん:中小企業がDXを進める上で、生成AIを導入すべき理由は大きく3つあります。まず根本的な課題である人手不足に対し、生成AIが何らかの支援に繋がります。次に、大企業と比べ劣っている情報収集・分析能力を生成AIが補完できるからです。中小企業では調査や分析を専門に行う人材が限られており、経営者自身や少数の総務部門がその役割を担わざるを得ません。生成AIはこの情報収集を代わりに行い、大企業との差を縮めるツールになり得ます。そして、中小企業は本来意思決定が速いという強みを持っていますが、情報が集まらずに判断できないという状況も少なくありません。AIによる情報収集やアイデア出しがこれを補完することで、元々持っている意思決定の速さを活かし、ビジネスを加速させる可能性があるからです。

現在の活動内容と狙い

――「北九州生成AI研究会」の現在の具体的な活動内容と、その狙いを教えてください。

井上さん:活動の柱は3つです。一つ目は、参加企業による「定例会議」で、それぞれがどのように生成AIを活用しているか、もしくは今後どうしたいかという情報交換を毎月行っています。二つ目は、広がりを目的にした、一般向けの「公開イベント」の開催で、9月の終わりにもイベントを実施しました。今後は2026年1月にも公開イベントをやる予定です。そして三つ目が「PoC(実証実験)」の実施です。

――3つ目の柱である「PoC(実証実験)」とは、具体的にどのようなものでしょうか。

井上さん:この研究会の目的は、AIを使った大規模なシステム開発ではなく、既存の生成AIツールを組織として導入する際の課題を研究することが中心です。例えば、個人でChatGPTを使うのは簡単ですが、組織として導入しようとすると、「どのツールを選ぶのか」「社内ガイドラインをどう作るのか」といった壁にぶつかります。

これは、ITコーディネータ協会が定義する生成AI導入アプローチのうち、「ツール活用型」に焦点を当てたものです。組織がAIに慣れるための、速く、取り組みやすいアプローチを実践し、その中で出てきた課題や解決策をレポートにまとめて皆さんに還元することを目指しています。

中小企業における生成AI導入の「壁」

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――中小企業で生成AIの導入が進まない、あるいは従業員に浸透しない原因は何だとお考えですか?

井上さん:原因は2つあると考えています。一つ目は、ユースケースが思い浮かばないことです。便利なのはわかるが、「自分の仕事の何に関係するの?」と、具体的な使い道がつかめていないからです。二つ目は、会社のルールがないことです。このルール不備について、従業員の方の反応は2つに分かれるでしょう。会社として「使っていい」というルールが定まっていないので、怖くて使えないか、社内の承認のない「シャドーAI」として闇で使われてしまうことです。どちらも望ましい状態ではありません。

――これから生成AIを導入する企業が、最初の一歩として準備すべきことは何でしょうか。

井上さん:個人の方にお伝えすることとしては、「まず生成AIを使ってみましょう」ということに尽きます。組織として導入する場合、必要な準備は今申し上げた課題への対策、つまり「ユースケースの開拓と共有」、そして「ガイドラインの整備」です。

――経営者が推進しても、現場が抵抗するケースもあると聞きました。

井上さん:従業員の抵抗は、AIに限った話ではありません。過去に、PCやITシステムが導入された時から、常に繰り返されてきたことです。「今まで通りで何が悪いんだ」という声は必ず出ます。

解決策は、まずは興味がある人から小さく始め、その効果をアピールすることです。そして経営者がそれを支援し、評価する体制を作ることが重要です。楽をするためには、最初に"「山を越える」負荷"が必ずかかります。その山を越えるのが嫌だから、やらない理由はいくらでも挙げられます。

共創活動の意義と今後の展望

――今回の「共創活動」には、どのような期待がありますか?

井上さん:一つは、公開イベント後の「ネットワーキング(交流会)」です。さまざまな企業が持つ悩みや活用法を共有する場は非常に重要です。もう一つ、実はこれが"裏テーマ"かもしれませんが、「参加している地域のITベンダーのレベルアップ」です。研究会活動を通じて、非IT企業を支援できるITベンダーが北九州市内で増えること。それが地域の力になると考えています。

――活動を北九州に限定せず、全国的な広がりも視野に入れていますか?

井上さん:もちろん、活動は北九州市内だけに閉じるものではありません。ITコーディネータ協会を中心として生成AI活用に関する情報交換イベントが全国的に展開されていますので、他地域の取り組み情報を参考としたり、北九州生成AI活用研究会の取り組みを発信したりすることで、新たなビジネスチャンスにつながると考えています。

――研究会としての将来的なビジョンをお聞かせください。

井上さん:「HAGUKUMI」期間内の短期的な目標は、取り組み内容をまとめ、発表会等で共有することです。長期的なビジョンとしては、実際の仕事として地域企業を支援し、そこで得た事例や課題を再び研究会で共有するというサイクルです。このサイクルを回すことが、最終的に北九州地域の底上げにつながると考えています。


地域DX共創事業「DX LAB KTQ」について

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公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)では、令和6年度より地域DX共創事業「DX LAB KTQ」を開始しています。

この取り組みは、北九州地域全体のデジタル化・DX推進のために共創活動に取り組む主体者の発掘から、関係性の構築を目的とした場の提供、共創活動団体の取り組み紹介、課題整理支援や課題解決に向けたソリューション提供企業(IT企業やスタートアップ等)とのマッチング、解決策の共同構築・検証のコーディネートなどを実施します。

この事業を通じ、周囲からの後押しやサポートの輪を広げ、地域内の企業がよりデジタル化・DXに取り組みやすい環境を構築し、北九州地域全体のDXを推進していきます。

これまでの活動については北九州市DX推進プラットフォーム内特設ページをご覧ください。

https://ktq-dx-platform.my.site.com/DXmain/s/meetup/dx-lab-ktq