地域DX共創事業「DX LAB KTQ」における共創事例をご紹介します。
スマートファクトリー研究会様の事例です。
自社のスマートファクトリーの取り組みを元に地域へ拡げられているスマートファクトリー研究会様にご興味を持たれた方は、ぜひロボット・DX推進センターまでお問い合わせください。

試行錯誤の経験を地域の力に スマートファクトリー研究会の共創

北九州を拠点に自動車部品製造を手がける松本工業株式会社は、2016年から約10年にわたるスマートファクトリー化の試行錯誤を経て、「スマートファクトリー研究会」を設立しました。内製の限界を経験した同社は、これまでの失敗と成功から得た知見を地域の製造業に還元しようとしています。

この記事では、研究会を立ち上げた同社代表取締役・舘下繁仁さんへのインタビューを通じて、設立の背景、10年の実践から得た学び、そして今後の活動計画について詳しくお伝えします。

内製化の限界と研究会設立の背景

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――「スマートファクトリー研究会」を立ち上げたきっかけを教えてください。

舘下さん: 当社はもともと「スマートなものづくり」を目指しており、2016年頃から自社でスマートファクトリーを作り上げていこうという取り組みを進めていました。

当初の取り組みは、外部に頼らず自分たちで何でもやっていく、というスタイルでした。元々、社風として「内製が好きな会社」です。建築部があるので建物も自分たちで建てますし、ソフトからハード、制御まで、エンジニアがいれば何でも作ってしまいます。そのため、「スマート」「デジタル」といった領域についても、「自分たちでやればできる」と考えていました。

さまざまな取り組みを内製で続けていましたが、どうしても「1社だけの取り組み」として、あまりにも自社特化の内容になりすぎており、自社のやりかたに固執してしまっているのではないかという感覚がありました。

また、単純にスピード感も問題視していました。当社はスマートファクトリー専門のメーカーではありませんので、技術者が忙しいときは別の仕事をしていることも多く、最新技術やトレンドに十分キャッチアップできていないのではないかという危機感もありました。

これらの理由により、外部にリソースを求め始めました。

――それで3社での共創という形になったのですね。

舘下さん: 福岡市のAI系スタートアップである株式会社AIBODさん、そして東京の株式会社ユビキタスAIさん、当社の3社で研究会を立ち上げました。

背景には、私たちの取り組みが、日本の多くの会社が悩んでいることを少し先に悩んで、もがいた結果だという実感があります。

私たちはたくさん失敗もしてきたので、「先に取り組んだ人だけが持っている経験値」が溜まっている状態です。今からスマート化に取り組もうとしている会社には「同じ苦労はしなくていい」と伝えられるのではないかと感じています。

3社による共創体制とその広がり

――研究会を構成する3社の役割と、共創する意義について教えてください。

舘下さん:当社は工場を持つ立場で、AIBOD社はAIやソフトウェア開発に強いシステムインテグレーターです。ユビキタスAI社は、製造業DXに関わるさまざまなソリューションを束ねており、約1,000社の製造業顧客様基盤を持つプラットフォーム的な立場です。

強みが異なる3社が組むことで、かなり広い領域をカバーできると考えていますし、1社だけで発信するよりも大きな発信力が生まれるのではないかと考えています。

――この共創を通じて、どのような広がりを期待されていますか。

舘下さん: 業界を問わず、よりオープンに話ができる場をつくりたいと考えています。

当社が携わっているのは、製造業の中でも自動車の部品を量産する工場というごく一部の領域にすぎません。全製造業の中では1〜2%程度で、まだまだ広大な領域が残っています。

例えば、食品工場、農業、畜産業など、「何かを生み出す現場」という共通点を持つ産業は数多くあります。さらに、病院や店舗など、サービス業の中にも、膨大な紙が発生している現場があります。

こうした分野の企業が仲間として加わってくると、共通する課題を見つけやすくなり、製造業以外にも横展開できる可能性が広がると考えています。実際に、製造業以外の企業からも工場見学の希望を少しずついただくようになってきました。

内製から共創への方針転換と学び

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――内製を進める中で、転機となった出来事があれば教えてください。

舘下さん: 工場では大量の検査や点検の記録が発生しますが、紙で記録してExcelに転記する運用でした。そこで自分で電子化ソリューションを作ったのですが、使いづらく、メンテナンス性も悪いものでした。対応に時間がかかり、「それなら紙の方がマシだ」という声も出てしまいました。

――それで方針を転換されたのですね。

舘下さん: そういった苦しみを経て、外部ソリューションに切り替えました。紙を電子に置き換える部分を外部に任せたことで、私たちは「出てきたデータをどう使うか」という本来注力したいところに、リソースを割けるようになりました。これは、苦しんだからこそ得られた学びです。

振り返ると、「帳票電子化の仕組みを自分たちで作ること」にこだわる必要はなかった、というのが大きな学びです。今始めるのであれば、最初から適切なソリューションを導入した上で、その先の価値創出にリソースを振り向けた方がよいと言えると思います。

スマートファクトリー研究会の活動を広げるための課題

――スマートファクトリー研究会の活動を進めるうえで、課題だと感じている点はありますか。

舘下さん: 周囲に「活動を知ってもらうこと」が課題だと考えています。最近は意図的にメディアに出るようにしていますが、私たちの活動に興味を持ってくれそうな企業に、活動の情報をどのように届けるか、という点については、まだ模索中です。

地域への貢献とこれからの企業へ

――これからDXに取り組もうとしている企業へメッセージをお願いします。

舘下さん: 私たちは、たくさん失敗もしながら、時間をかけてここまで来ました。その経験を通じて言えるのは、「こうしなければいけない」という決まった答えはないということです。

ただ、「こうした方が近道だった」「ここがはまりやすいポイントだった」ということは、確実にあります。それを共有することで、皆さんが同じ苦労をしなくて済むようになればと思っています。

――今回の活動が地域にもたらす影響について、どのように考えていらっしゃいますか。

舘下さん: 北九州市は工業・製造業が盛んな地域です。大きなグローバル企業もあり、さまざまなプレイヤーと出会える地域です。ものづくりが盛んな地域であればあるほど、私たちの発信は役に立つと感じています。

研究会の活動と将来ビジョン

――この活動を通して、どのようなことを実現したいと考えていますか。

舘下さん: 中小規模の会社がスマートファクトリーを作り上げるには、このようなロードマップが良い、このような要素が必要だというのを示しながら、場合によってはパッケージ的に支援できる体制、つまりスマートファクトリーのインテグレーション業務を見据えています。

――研究会では具体的にどのような活動を行うのでしょうか。

舘下さん: 月1回程度、北九州市内の中小製造業を対象に研究会を開催します。当社が実際に導入したソリューションについて、検討時の課題や導入後の効果、費用対効果といった、テクノロジーの話だけではない部分まで包み隠さずお話しします。その後、参加企業の皆さんとディスカッションを行い、それぞれが抱える課題についても議論していきます。

また、研究会に参加しているAIBODさんやユビキタスAIさんといったIT企業からは、最新のDX製品やサービスの紹介、さらに各社の具体的な課題に応じた相談にも応じていただく予定です。工場見学の機会も設け、実際の現場を見ていただきながら、より実践的な情報交換ができる場を作っていきます。

研究会の活動計画と伝えたいこと

――最後に、この活動を通じて一番伝えたいことを教えてください。

舘下さん: ここで本当に伝えたいのは、「ツールやシステムを買うこと」が大切なのではなく、「それらをどう使いこなし、どう付加価値を生み出すか」という部分です。私がその考え方にたどり着くまでのプロセスも含めてお伝えできればと思っています。


地域DX共創事業「DX LAB KTQ」について

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公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)では、令和6年度より地域DX共創事業「DX LAB KTQ」を開始しています。

この取り組みは、北九州地域全体のデジタル化・DX推進のために共創活動に取り組む主体者の発掘から、関係性の構築を目的とした場の提供、共創活動団体の取り組み紹介、課題整理支援や課題解決に向けたソリューション提供企業(IT企業やスタートアップ等)とのマッチング、解決策の共同構築・検証のコーディネートなどを実施します。

この事業を通じ、周囲からの後押しやサポートの輪を広げ、地域内の企業がよりデジタル化・DXに取り組みやすい環境を構築し、北九州地域全体のDXを推進していきます。

これまでの活動については北九州市DX推進プラットフォーム内特設ページをご覧ください。

https://ktq-dx-platform.my.site.com/DXmain/s/meetup/dx-lab-ktq