【DX LAB KTQ】従業員の健康を「感覚」から「データ」へ 健康経営DX推進コンソーシアムの挑戦
地域DX共創事業「DX LAB KTQ」における共創事例をご紹介します。
健康経営DX推進コンソーシアムの事例です。
生産性とウェルビーイングの両方を意識しながら、健康経営の仕組みづくりに取り組まれている健康経営DX推進コンソーシアム様にご興味を持たれた方は、ぜひロボット・DX推進センターまでお問い合わせください。
従業員の健康を「感覚」から「データ」へ 健康経営DX推進コンソーシアムの挑戦
「従業員の健康は個人の責任だ」という話を、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、労働力人口の減少と高齢化が進む中で、従業員の健康は「経営指標」そのものになっています。
「健康経営DX推進コンソーシアム」は、株式会社リライブの三賀山史朗さんが持つ理学療法士としての臨床経験とデジタル技術を掛け合わせ、生産性とウェルビーイングの両方を意識しながら、健康経営の仕組みづくりを進めています。
なぜ今、健康経営にDXが必要なのでしょうか。同社の田中聡代表と三賀山さんにうかがいました。
健康経営DXへの挑戦の背景
――「健康経営DXコンソーシアム」を立ち上げた経緯を教えてください。
三賀山さん: 元々、企業の健康経営支援を行っており、健康データを見える形にしたいと考えていました。北九州産業学術推進機構が主催するDXツアーに参加した際、同じく福岡県で健康経営に取り組む株式会社ピーエムティーの竹内拓也さんと出会い、共同でプログラムを立ち上げることになりました。
――株式会社リライブが健康経営に本格的に取り組むようになったきっかけは何だったのでしょうか。
田中さん: 弊社がM&Aをしたことが大きなきっかけでした。30人の会社が70人の会社を買収したのですが、従業員が安心して働き続けられる環境が整っていませんでした。そこで、経営者と従業員が一緒に健康課題を解決していけるプロセスを作りたいと考えたのです。
三賀山さん:私自身、理学療法士として病院で働く中で、手遅れになってから来院する患者さんを多く見ており、「もっと早い段階でできることはなかったか」といつも感じていました。
――なぜ今、北九州で「健康経営」と「DX」が必要なのでしょうか。
三賀山さん: 北九州は製造業・建設業・運輸業など労働負荷の大きい業種が多く、健康課題が深刻ではないかと考えています。多くの企業が健康経営に関心はあるものの、具体的な方法がわからず、健康診断のデジタル化にとどまっています。データを活用した経営改善には至っていないのが現状です。だからこそDXが必要なのです。
三人の専門家が集まる共創の形
――なぜ「共創」という形を選んだのでしょうか。
三賀山さん: 私たちの目標は、従業員の健康状態をデータ化し、経営者には感覚ではなく数値で納得してもらうことです。しかし、私は理学療法士として現場の体を見るスキルはありますが、データ収集や分析は専門外です。そこで、私を含めた三人の専門家が強みを持ち寄る「共創」という形を取りました。
株式会社ピーエムティーの竹内さんは企業側の視点を持ち、実際に健康経営を推進している経験があります。製鉄記念八幡病院の加納啓介さんは、臨床と研究を両立しながら、健康データの分析や介入効果の検証に強みを持っています。異なる専門性を持つ三人だからこそ、効果的な「共創」が実現できます。
――「共創」にどのようなことを期待していますか。
三賀山さん: HAGUKUMIでは、さまざまなDX関連の団体や企業と繋がることができます。中小企業が単独で取り組むには限界がありますが、こうした横のネットワークを活用できることも、共創活動の大きな意義だと考えています。
業種別の健康課題とDXツールの活用
――業種によって健康課題は異なると思いますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
三賀山さん: 例えば、同じ腰痛でも、業種により原因が異なります。運輸業のトラック運転手なら振動、製造業なら立ちっぱなしであること、デスクワークなら前かがみ姿勢、農家さんなら重いものを持つ動作が腰痛の原因です。同じ腰痛でも原因が違えば、対応方法も変わります。
――そうした課題に、DXをどう活用するのでしょうか。
三賀山さん: 例えば、従業員の腰に体の動きを測るセンサーをつけることで、前かがみになったり体をひねったりする回数を数値化できます。
また、従業員に出退勤時に「今の気持ちは晴れですか? 曇りですか?」といった簡単な質問に答えてもらい、心の状態のデータを日々蓄積していきます。これらのデータを体調と結びつけて分析すると、「腰痛のある人は気分が曇りがちだ」とわかります。腰痛への対策を取れば精神面も改善するといった相関も見えてくるのではないかと考えています
――実際に企業が取り組んでいる具体的な対策について教えてください。
田中さん: 例えば運送会社の場合、運転手さんは4時間に一回、休憩を取ります。休憩時間に寝て過ごす人が多いのですが、その時間に体操をするだけで腰痛が軽くなることがわかっています。
三賀山さん:デスクワークなら、20分に一回休憩するだけで生産性が上がります。Webアプリで定期的に画面をロックし、そのときに従業員に体操や立ち話を促すだけでも効果があります。業種に合わせた体操の導入やリーダーによる声かけを増やすといった工夫でも効果が見込めます。
経営者の意識を変えるデータという武器
――健康経営が広がりにくい一番の問題は何でしょうか。
三賀山さん: やはり経営者層の意識だと考えています。「従業員の健康は、会社が管理するものではなく、個人の責任だろう」という考え方が根強くあります。従業員の健康管理に対し、会社として協力が得られにくいケースは少なくありません。
――その「壁」をどう乗り越えようとしていますか?
三賀山さん: DXに関心のある企業の経営者は、業務効率化や社員のことを考えている方が多いと感じています。そうした経営者は健康経営とも親和性が高いと考えているので、そこからアプローチしたいと考えています。また、経営者と私たちの地道な関係構築も大切だと感じています。長い時間をかけて腹を割って話せる関係を作ることの重要性を痛感しています。
その中で最も重要なのが、従業員個々の状況(業務中の身体の痛み、筋力、作業環境、会社に対する声)をデータで見える化することです。何百人もいる企業で、私たちがデータで「この従業員は健康リスクが高い」と数値で示せば、経営者も納得しやすい。一人の損失がどれだけコストになるかも合わせて示せると、より理解が進みます。
世代間の価値観を超えて
――健康経営が広がりにくい背景には、世代間の価値観の違いもあるのでしょうか。
田中さん: 大きく影響していると思います。上の世代の経営者は「給料を払っているのだから当たり前」という論理でした。でも実は、従業員が稼いできてくれたお金が会社に入っているのです。
これからは、従業員の力を伸ばして売り上げを上げていくスタイルに変えないといけません。そうしていかないと、人材が減少していく中で乗り越えられないと思います。
短期・中期・長期で描く健康DXの未来
――今後、コンソーシアムでは短期・中期・長期でどのような展望を描いていますか?
三賀山さん: 短期的には、健康経営優良法人を取得している企業などに登壇いただき、意識を高める啓発活動を行います。同時に、製造、介護、運輸などさまざまな業種の健康データを集め、業種ごとの特徴をカバーできるデータベースを構築します。
中期的には、そのデータを基に、支援先企業ごとの健康リスクや改善効果を可視化できるシステムを開発したいと考えています。
そして将来的には、健康指標が経営指標の一部になる風土を作り、北九州から生まれる健康DXの取り組みが、地域で働きやすい環境づくりにつながればと考えています。
地域DX共創事業「DX LAB KTQ」について

公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)では、令和6年度より地域DX共創事業「DX LAB KTQ」を開始しています。
この取り組みは、北九州地域全体のデジタル化・DX推進のために共創活動に取り組む主体者の発掘から、関係性の構築を目的とした場の提供、共創活動団体の取り組み紹介、課題整理支援や課題解決に向けたソリューション提供企業(IT企業やスタートアップ等)とのマッチング、解決策の共同構築・検証のコーディネートなどを実施します。
この事業を通じ、周囲からの後押しやサポートの輪を広げ、地域内の企業がよりデジタル化・DXに取り組みやすい環境を構築し、北九州地域全体のDXを推進していきます。
これまでの活動については北九州市DX推進プラットフォーム内特設ページをご覧ください。
https://ktq-dx-platform.my.site.com/DXmain/s/meetup/dx-lab-ktq







