地域DX共創事業「DX LAB KTQ」における共創事例をご紹介します。
製造業IoT活用研究会の事例です。
※同団体における昨年度の取り組みについてはこちら

地域企業へIoTの活用を拡げられている製造業IoT活用研究会様にご興味を持たれた方は、ぜひロボット・DX推進センターまでお問い合わせください。

「IoTは難しい」66.7%の先入観を検証する 製造業IoT活用研究会

「IoTは難しい」――アンケート調査では66.7%がそう答えた一方で、実証実験ではIoT導入の効果が確実に表れています。この「印象」と「実態」のギャップこそが中小製造業のデジタル化を阻む最大の壁だと、「製造業IoT活用研究会」代表の平畑輝樹さん(イジゲングループ株式会社)は指摘します。

2024年8月に始動した同研究会は、今年度、IoT機器の無償レンタルプログラムを通じて「難しさの正体」を解明することに挑戦しました。昨年度の活動で見えてきた課題と、そのギャップを埋めるための新たなアプローチについて聞きました。

昨年度の活動と見えてきた課題

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――まず、昨年度の活動について振り返りをお聞かせください。

平畑さん:昨年度は工場見学、アンケート調査、実証実験の3つを実施しました。まず、団体会員である株式会社戸畑ターレット工作所での工場見学会を開催し、IoT活用の実例を紹介しました。40人もの方に参加いただき、IoTそのものを知る機会を提供できました。

次にアンケート調査を実施したところ、「IoTは難しい」と感じているとの回答が66.7%と、圧倒的多数を占めました。一方、北九州市内の研磨加工会社での実証実験では、IoT導入により稼働状況の可視化や改善余地の把握(ムダの見える化)といった業務改善効果を確認できました。

――アンケート結果からはどのようなことが見えてきたのでしょうか。

平畑さん:導入前の印象と導入後の実態にギャップがあるということです。実証実験では業務改善効果が出ているのに、導入経験がない段階では心理的ハードルが非常に高いという状況でした。

「IoTは本当に難しいのか」を検証する

――今年度はどのような活動を計画されていますか。

平畑さん:昨年度は1社での実証実験でしたが、今年度は対象を広げて、複数の企業で「難しさの認識」がどう変化するかを検証します。IoT機器の無償レンタルプログラムを通じて、事前・事後アンケートで導入障壁の可視化と、心境や意識の変化を分析します。

このギャップを埋めない限り、普及は難しいと考えています。そのために「難しさを感じさせないためにどうすべきか」を皆で考えていくのが今期の活動です。

――「難しさ」とは具体的に何を指すのでしょうか。

平畑さん:最近はIoT機器を簡単に作れるツールがたくさん出てきているので、そのハードルは下がってきています。ただ、「どのような場面・工程・要因に対して難しいと感じているのか」を具体的に明らかにしたいと考えています。

共創がもたらす具体的な効果

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――共創を通じて、どのような効果がありましたか。

平畑さん:製造業向けに作ったツールでも、いろいろな業界で使えるということです。昨年度、製造業向けにツアーを開催したのですが、製造業ではない企業の方も「DXの参考に」と、多く参加してくださいました。その中で、「製造業向けに作られたソフトウェアを違う用途で使えないか」という相談をいただき、実際に導入に至った企業もあります。

これは、共創によってさまざまな業種の方を集めたからこそ生まれた成果です。

――単独でのDX推進と比べて、何が違いますか。

平畑さん:DXを進めるには、何かしらのネットワークが絶対に必要だと考えています。

自社の業務効率化に成功した企業から、「このシステムを他の企業にも販売していきたい」という相談が出てくるようになりました。「自分たちはここで悩んでいるが、これは競合他社も困っているはずだ」という視点から、「自分たちがまず効率化し、その先には他社にもこのツールで便利になってもらう」という共創的な目線で活動する企業が増えてきたと感じます。

――システム開発において、どのような視点が重要でしょうか。

平畑さん:システムを開発するときには、最初から「将来的にそれを外販するつもりなのか」という目線を持つことが、結構大事だと考えています。外販を意識することで自社の改善にもつながるんです。自分たちがまず効率化し、その先には他社にもこのツールで便利になってもらうという形で、今取り組んでいただいています。

全体俯瞰がDX成功の鍵

――DXを進める上で、どのような点に注意すべきでしょうか。

平畑さん:業種に関わらず、「DXではどのようなツールを使ったらよいですか」とよく聞かれます。しかし、ツール選びの前にまずやるべきことがあります。

私たちは「トヨタ式カイゼン」の出発点とされる、「物と情報の流れ」を最初に描いて全体を可視化します。

一般的に販売されているシステムは全てが連携できるソフトではない限り、業務に特化した部分最適のツールです。こうしたツールをそれぞれ導入した結果、システム間で連携できず困っているという声もよく聞きます。この様な事態は、全体を俯瞰していないから起こることだと考えています

――全体像を描く際に、どのような点に注意すべきでしょうか。

平畑さん:外部の中立な方がいた方が良いと思います。社内だけでやろうとすると、人間関係や力関係があって、議論が進みにくくなりがちです。最初に中立な立場の人が入って全体像を作ってしまえば、その後の議論は社内でも進めやすくなると考えています。

フラットな視点でIoTを見る

――これからDXに取り組みたい企業へのメッセージをお願いします。

平畑さん:私たちはIoTをおすすめしていますが、IoTがすべての課題を100%解決する手段だとは決して思っていません。やらなくてもよい場面ももちろんあります。だからこそ、研究会では「どこに本当にIoTが適しているのか」をフラットに見極めるお手伝いをしています。

会社全体を俯瞰して課題を整理し、適切な場所に適切なツールを導入する。そのための支援が私たちの役割だと考えています。

研究会の今後の展開

――研究会としての今後の展開をお聞かせください。

平畑さん:まずは、さまざまな業種・業界でのIoT活用事例を積極的に公開・共有していきたいと考えています。「IoTは難しい」という先入観がまだ強いので、そこをまず払拭することが重要です。

一方で、本格的にIoTを活用して継続的なカイゼン活動に取り組む企業に対しては、有償での支援サービスを提供する仕組みを整備していきます。無償で行うところと有償で行うところを明確に分けて、ノウハウや導入支援、継続的改善の手法をマネタイズできる形で展開していく予定です。

――DXを加速させるために、どのような視点が必要でしょうか。

平畑さん:DXの先進事例として紹介されている企業の多くは、10年近い年月をかけて現在の水準に到達しています。これからDXに取り組む企業が同じペースで進めていたら、10年後には環境が変わって、先進事例すら古くなってしまうでしょう。

今後のDXは"追いつく"のではなく、"追い越す"視点が必要だと考えています。そのためには、現場の状況をリアルタイムで把握できるIoTの活用と、成功事例や失敗事例を素早く共有できる共創型の情報基盤が不可欠です。

自社内にノウハウを閉じ込めるのではなく、あえて情報をオープンにして企業間で共有する。そうすることで改善サイクルを高速化し、地域全体の競争力を底上げしていきたいと考えています。

――他の企業との連携についてはいかがですか。

平畑さん:この仕組み自体を一緒に広めていただけるような企業が集まっていただけると嬉しいですね。特に北九州に多い建設系の企業とご一緒する機会があるといいなと思っています。


地域DX共創事業「DX LAB KTQ」について

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公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)では、令和6年度より地域DX共創事業「DX LAB KTQ」を開始しています。

この取り組みは、北九州地域全体のデジタル化・DX推進のために共創活動に取り組む主体者の発掘から、関係性の構築を目的とした場の提供、共創活動団体の取り組み紹介、課題整理支援や課題解決に向けたソリューション提供企業(IT企業やスタートアップ等)とのマッチング、解決策の共同構築・検証のコーディネートなどを実施します。

この事業を通じ、周囲からの後押しやサポートの輪を広げ、地域内の企業がよりデジタル化・DXに取り組みやすい環境を構築し、北九州地域全体のDXを推進していきます。

これまでの活動については北九州市DX推進プラットフォーム内特設ページをご覧ください。

https://ktq-dx-platform.my.site.com/DXmain/s/meetup/dx-lab-ktq