【DX LAB KTQ】中小製造業のサイバーセキュリティBCPを共創で作る 北九州市IoT実践研究会
地域DX共創事業「DX LAB KTQ」における共創事例をご紹介します。
北九州市IoT実践研究会の事例です。
※同団体における昨年度の取り組みについてはこちら。
中小企業におけるIoT実践だけでなく、サイバーセキュリティにも取り組まれている北九州市IoT実践研究会様にご興味を持たれた方は、ぜひロボット・DX推進センターまでお問い合わせください。
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中小製造業のサイバーセキュリティBCPを共創で作る 北九州市IoT実践研究会
サイバー攻撃によって製造業の生産が停止する事例が相次ぐ中、多くの中小企業はセキュリティ対策が整っていない状態で稼働を続けています。
北九州市の製造業14社が参加する「北九州市IoT実践研究会」は、2018年の設立当初はIoT活用のノウハウ共有を中心に活動していましたが、現在は「サイバー攻撃を前提としたBCP(事業継続計画)」の構築へと活動の幅を広げています。
今回、この研究会を代表する中野貴敏さん(株式会社戸畑ターレット工作所)と、メンバーの白石有さん(株式会社夢をかなえる研究所)に、サイバー攻撃に備える「共創」の価値と、中小企業が踏み出すべき一歩についてうかがいました。
サイバーセキュリティBCPへの取り組み
――まず、北九州市IoT実践研究会がサイバーセキュリティBCPに力を入れ始めた背景を教えてください。
中野さん:私たちの研究会は、北九州市内の中小企業がIoTを活用し、生産性向上を目指すために設立されました。主な目的は、現場での「困りごと」を共有し、解決に向けてノウハウを分かち合うことです。
昨年度から、「サイバーセキュリティBCP」にも取り組んでいます。そこで重視しているのは、単なるウイルス対策ソフトの導入だけではありません。万が一サイバー攻撃を受けた場合に、緊急時の生産体制をどう構築するか。つまり、『被害発生時に誰が何をどう動くか』を明確に決めておくことだと考えています。
――サイバー攻撃はIT部門だけの問題ではないということでしょうか?
中野さん:もしウイルス対策ソフトをすり抜けられた場合、警察の調査や現場検証により、会社の業務が完全に止まってしまう場合もあります。そうなれば経営リスクとして非常に大きな問題になります。
白石さん:サイバー攻撃はIT分野だけの話のように思えますが、IT専門家だけに任せず、経営者が経営の視点からどのように対応するかも考える必要があります。
共創がもたらす価値
――この研究会では、なぜ「共創」を重視されているのでしょうか?
中野さん:もともとこの研究会は、IoT中心の技術交流会として始まりました。しかし、白石さんの参加とともにサイバーセキュリティをテーマに加えたことで、より幅広い企業が加わり、共創の輪も大きくなりました。
白石さん:製造業は業種によって求められるBCPが全く異なります。また、北九州の製造業は下請け型が多く、外部との交流が閉鎖的になりがちです。
中野さん:だからこそ、経営者同士が信頼関係を築く中で、ノウハウを惜しみなく共有できる「共創」の場が必要です。さまざまな企業が参加していることで、業界ごとに異なる緊急対応や被害の影響度など、あらゆるケースを想定できる点が共創の大きなメリットです。
白石さん:たとえば、非常時に紙ベースでの業務運用が可能かどうか、古いシステムを残しておくべきか、といった議論も出てきました。こうした点も企業や業界によって違います。
中野さん:DXを通じて社内のアナログデータをデジタル化していますが、BCPを考える際には合理化や省力化だけでなく、他にも考えておくべきことがあると今回の活動で気づかされました。
――共創を通じて得られた成果について教えてください。
中野さん:最大の成果は「BCPの重要性」と、その対策が企業ごとに多様であると全員で理解・認識できたことです。その結果、「BCPはリードタイムなどの条件に応じて個別に作る必要がある」と、具体的な課題も明らかになりました。
また、ある会員企業が開発した電力測定の仕組みに別の企業が関心を持ち、すぐにアイデアが共有されました。技術交流をしながら共創する、会員限定の研究会だからこそ、知識やノウハウを惜しみなく共有でき、密度の高い交流が実現しています。
――共創を通じて得た新しい視点や気づきはありましたか?
中野さん:自動車業界で使われる「カンバン(紙ラベル)」は、なぜ今もデジタル化されないのかという疑問から、「この仕組み自体がBCP(事業継続計画)なのでは?」という新しい気づきを得ました。
白石さん:私はITエンジニアではありませんでしたが、研究会に参加して「ITも面白い」と感じるようになりました。たとえば、工場の電力量を測る仕組みを数万円のハードウェアで自作できると知り、業者へ外注するよりはるかに安くなることを実感しています。こういった新しい知見を共有できる点が共創の大きな価値です。
課題を乗り越える「自分たちで考える」姿勢
――活動を進める中で直面した課題はありますか?
白石さん:参加企業の業態が多様で、守るべきポイントやリードタイムが異なり、一つにまとめて対応することが難しいと感じました。
――活動を進める中で直面した課題と、その解決に向けた取り組みを教えてください。
中野さん:世の中には高額なBCPコンサルティングもありますが、私たちは「自分たちで考え、自分たちで納得し、自分たちで行う」という原則を大切にしています。これはこの会の当初からの方針です。
まずは自発的に動き始めて形を作り、その後で公的な支援やベンダーとの連携を考える。最初から大きな投資をするのではなく、効果を確かめてから次のステップへ進む段階的な進め方が、中小企業には特に必要だと考えています。
――今期の具体的な計画を教えてください。
中野さん:5カ年計画で進めています。今年度は業態ごとに会員企業を分類し、それぞれに対応した雛形を作成します。最終的なゴールは、再来年までに各企業がBCPを定義し、適切なセキュリティ対策を確立することです。
懇親会が育む信頼関係と今後の展開
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――活動を通じて、メンバー間の関係や意識に変化はありましたか?
中野さん:懇親会ではマニアックな話題が熱心に交わされ、90分の飲み放題でも「延長できないか」と言うほど熱意があります。
この会は、特定の製品やサービスを売り込むための場ではないからこそ、安心して参加できるという面があると思っています。ビジネスライクなものを排除しているからこそ、本音で困りごとを話せる。それがこの研究会の強みだと考えています。
――今後の活動で、新たに取り組みたいことはありますか?
中野さん:今年度の「ジャンル分け」を通じて、来年から再来年には各企業が自社に合ったBCPを定義できる状態を目指します。また個人的には、生成AIを製造業にどう生かすかということにも注目したいです。
――まだ取り組みを始められていない企業に対して、どのような役割を果たしたいですか?
白石さん:この研究会の知見を共有することで、「これなら自分たちにもできる」と思う企業が増え、一歩目を踏み出す後押しになるような団体を目指しています。
中野さん:そのために、研究会のInstagramアカウントとWebサイトも開設予定です。新メンバーの課題感をみんなで話し合い、協力して解決することも大事にしていきたいです。
――共創やDXに挑戦したい企業へメッセージをお願いします。
白石さん:まずは身近なところから始めてみること、そして好奇心を持つことが大事だと思います。
中野さん:北九州市には「北九州市デジタル相談窓口」などの公的支援も多く用意されています。そういったサポートを活用するのも良いですし、この研究会のように会費無料で「困りごとを共有する」ことからスタートするのも一つの方法です。
――この研究会が今後も大切にしていきたいことは何ですか?
中野さん:もともとは約7年前、新しい技術の導入に「どうやればいいかわからない」と悩む企業が集まり、「みんなで課題を解決しよう」と始まったのがこの会の出発点です。新しい技術が登場したときに「困りごとを共有して解決する」姿勢こそが大切だと考えています。今後も課題がある限り、この姿勢を大事にしながら活動を続けていきたいです。
地域DX共創事業「DX LAB KTQ」について

公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)では、令和6年度より地域DX共創事業「DX LAB KTQ」を開始しています。
この取り組みは、北九州地域全体のデジタル化・DX推進のために共創活動に取り組む主体者の発掘から、関係性の構築を目的とした場の提供、共創活動団体の取り組み紹介、課題整理支援や課題解決に向けたソリューション提供企業(IT企業やスタートアップ等)とのマッチング、解決策の共同構築・検証のコーディネートなどを実施します。
この事業を通じ、周囲からの後押しやサポートの輪を広げ、地域内の企業がよりデジタル化・DXに取り組みやすい環境を構築し、北九州地域全体のDXを推進していきます。
これまでの活動については北九州市DX推進プラットフォーム内特設ページをご覧ください。
https://ktq-dx-platform.my.site.com/DXmain/s/meetup/dx-lab-ktq







