入居企業インタビュー

北九州市内の産学連携の推進を目的に、大学、研究機関、企業等で構成された北九州学術研究都市(以下、「学研都市」)。産学連携の「産業」を担う、企業や研究機関等も学研都市内の施設に入居されています。現在、学研都市に入居企業や研究施設の皆様に、入居理由やメリット、現状などをうかがいました。

九州工業大学発、学研都市ベンチャー企業第一号
IT分野を開拓する(株)ブラテック

代表取締役社長の岩崎さんは、九州工業大学大学院生命体工学研究科の第一期生としてロボットの視覚機能などを研究する傍ら、学研都市で最初の学生ベンチャー企業であるブラテックを立ち上げました。現在は、イーラーニング(Moodle)やECサイト構築(EC-CUBE)などで全国的な企業として成長を遂げています。

Q. 入居のきっかけは

A. ブラテックはもともと、九工大の情報工学部(飯塚市)の学生が大学の先端技術を地元企業へ出前講演するための団体だったんです。その後、学会運営や大学の技術調査などもやっていましたが、元々興味があったIT系分野を本格的な仕事にしようと、ホームページ作成や大学のシステム開発などを始めました。創業当時は、生命体工学研究科の一室を借りて研究と仕事をしていましたが、手狭なことと仕事に専念するスペースが必要だと感じ、北九州産業学術推進機構の方などにも相談して現在も入居している事業化支援センターの共同オフィスに入居を決めました。仕事に専念することができましたし、創業5年以内での減免措置があり固定費などが抑えられたのも助かりました。

Q. 学研都市・北九州拠点のメリットは何ですか

A. 私にとって仕事場から母校に歩いて行ける距離というのがメリットです。大学発のベンチャー企業として大学の研究開発の事業化やプロトタイプなど業務に関わりやすいし、学生バイトを確保しやすく、今のところ学研都市にはIT企業が少ないのでシステム開発などの相談を受けることも多いです。学研都市には新しい企業が増えているので、今後の事業展開も見込めそうです。それに、お客様が来社されたときに、場所もいいし建物もきれいで、うらやましいと言われることもよくあります。

Q. ブラテックの強みとは

A. イーラーニングと通販サイトのシステム開発が当社の2本柱です。イーラーニングは全国の大学で使われているMoodle(学習管理システム)の導入、拡張を得意としています。近隣の大学で構築から運用、保守までを任せていただいています。コロナ禍でリモート授業の比率が上がったこともあり、動画配信機能などを強化しています。ECサイトに関しては、システムの構築はもちろん、オープンソースで機能拡張する、例えば、運送会社とのシステム連携やたくさん買うとポイントアップ、といったサイト運営者が必要なものだけを追加できるシステムを開発しています。低価格でECサイトを構築できるといったことが喜ばれています。このようなストック型のシステムは売り上げの3割を占め、業界では10年近くトップクラスの売り上げです。イーラーニングとECサイトの構築に関するシステム開発については実績もあり、全国で勝負できます。

Q. 今後のビジョンを教えてください

A. 元々、大学発のベンチャー企業なので、大学の研究成果を事業化することに力を入れたいです。現在、AIを活用した口腔がんの診断支援システムを手掛けています。これは大学の先輩でもある九工大の先生と九州歯科大の先生が10年くらい研究した成果です。医療系のシステムなのでセキュリティや規制などをクリアしないといけませんが、営業展開するためのサプライチェーンとの商談を進めているところです。この事業を数年後には経営の3本目の柱にしたいですね。そして、5年以内に従業員数、売り上げが倍になるようがんばります。

岩崎 正明 博士(工学)
株式会社ブラテック 代表取締役社長

IT企業が多い大都市ではなく北九州での起業を「ここで自分のやり方、地に足をつけて仕事ができ成長を続けることができました。私の性格に合っていたのでしょう」と振り返ります。趣味はマラソン。フルマラソンでは飽き足らず、160㎞走ったり、トレイルランに挑戦してみたりとアクティブ。