Vol.2 株式会社アポロジャパン

北九州市内の産学連携の推進を目的に、大学、研究機関、企業等で構成された北九州学術研究都市(以下、「学研都市」)。産学連携の「産業」を担う、企業や研究機関等も学研都市内の施設に入居されています。現在、学研都市に入居企業や研究施設の皆様に、入居理由やメリット、現状などをうかがいました。

目指しているのは鳥の進化の潔さ
研ぎ澄まされた技術が社会に羽ばたく!

見えないコードを印刷物に埋め込み、デザインに影響を与えずに情報を読み取ることができる特許技術「スクリーンコード」や、自動運転制御、画像認識などへ応用が期待される新世代人工知能SDL(Self-discipline Learning)などを開発する(株)アポロジャパン。近年、自動運転の電気自動車(バス)のプロジェクトへの参画や、スクリーンコードが印刷されたハイブリッド絵本などを手がけるなど、これまで開発してきた技術がさまざまな分野に広がりをみせています。

Q. 入居のきっかけは

A. 8年くらい前までは横浜に拠点がありました。私は福岡出身なのでいずれ、福岡に拠点を移そうと思っていました。九工大出身の同級生が学研都市に起業していたので、北九州市の学研都市のことは以前から知っていました。またFAISの自動車産業支援センターもあるので、弊社の自動運転技術と協業の可能性があるのではないかと思い、2020年に入居しました。

Q. 学研都市・北九州市拠点のメリットは何ですか

A. 北九州市がスタートアップ企業の重点都市に選ばれていることとで、さまざまなサポートがある点がよかったです。利用したのは、メンタリングによる事業計画のブラッシュアップにも参加し、イタリアのボローニャ国際児童図書展の視察も行かせてもらいました。同年、JETRO北九州からの勧めで世界最大の技術の見本市であるアメリカ、ラスベガスのCESも申請が通り参加しました。このようにベンチャー企業が必要な情報の収集が大変しやすいこと、サポートの体制が整っていることがメリットです。2024年には自動車産業支援センターの仲介もあり、電気バスへの自動運転実証実験が実現しました。
また、学研都市自体もすごく気に入っています。本が好きなので、学研都市の図書室が徒歩2、3分で歩いていけるし、住むところもすぐ近くに見つけることができて生活圏が近かったというのはよかったです。最近は、「ODORIVA」(産学連携センター1Fの交流施設)もいいなと思っています。明るくて、静かで、飲食もできるということで打ち合わせなどに使えてそうですね。まだ使えてないですけど(笑)。

Q. アポロジャパンの強みとは

A. 強みは技術、弱みは営業。私の大好きな鳥は、恐竜から進化して鳥になったと言われています。飛ぶために不要な機能をそぎ落として飛べるようになって、今の繁栄があるわけですよ。アポロジャパンの技術も同じように進化させたいですね。日本では私と夫(取締役:CTO岸上蒼氏)、中国に技術者が20人くらいで技術開発しています。スクリーンコードはソリューションとして広がっていますし、タッチした部分が音声になるタッチペンは、音の出る教材として文科省の音声教材で採用されています。しかし営業など補完しないといけない部分については、絵本の出版の時は営業面が得意な会社や人が補ってくれました。自動運転についてもソフトウェアの技術はあるけど、車、バスといったハードウェアがない、そこには電気自動車(バス)を作っている会社と組めた、という感じです。

Q. 今後のビジョンを教えてください

A. 会社全体としては、この技術をいかに残していけるか、どうやって次の世代に残していくのか、アポロジャパンの技術を理解して生かしてくれる人を見つけることです。個々の事業としては、自動運転技術については、バスの自動運転がいいと思っています。バスは運転手の高齢化、なり手不足、過疎化しているところは運行本数が少ない、免許返納したら足がなくなってしまっている。そんな地域にゆっくりしたスピードで通院とか買い物に利用できるコミュニティーバスみたいなバスが自動運転できたらいいですね。困った人の役に立つことができると思います。スクリーンコードについては、私たちには書籍の販売ルートがないので、ライセンス契約にしてたくさんのところで使ってもらえるといいなと思っています。(取材:2025年2月)

岸上 郁子
株式会社アポロジャパン 代表取締役 社長

大学時代の恩師から「一度は行く価値がある」とすすめられた「金子みすゞ記念館」を訪れ、みすゞ作品のすばらしさに感銘をうけた岸上さん。スクリーンコードを使った金子みすゞの「鳥の詩」を出版、2024年11月には絵本「こねこが」にスクリーンコードが採用され「声が出るハイブリッド絵本 こねこが」(作:まつおか たつひで、出版社:めくるむ、ISBN:9784910543116)として再出版。専用アプリでスクリーンコードを読み取ると、そのページの文章が朗読されます(多言語対応)。そして鳥をこよなく愛する岸上さんが飼っているオカメインコとセキセイインコは、岸上さんのFBなどに登場し、かわいらしい姿を見せてくれます。