Vol.3 環境エネルギー株式会社

北九州市内の産学連携の推進を目的に、大学、研究機関、企業等で構成された北九州学術研究都市(以下、「学研都市」)。産学連携の「産業」を担う、企業や研究機関等も学研都市内の施設に入居されています。現在、学研都市に入居企業や研究施設の皆様に、入居理由やメリット、現状などをうかがいました。

学研都市の大学との共同研究で
廃プラ、バイオマスをジェット燃料へ

廃プラスチック、バイオディーゼル油化および装置や触媒などを研究開発・製造する環境エネルギー株式会社。学研都市の研究所では、持続可能なジェット燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)生成のための触媒を中心に研究しています。

Q. 入居のきっかけは

A. 10年以上前に藤元薫先生(東京大学・北九州市立大学名誉教授、一般社団法人HiBD研究所所長)と朝見賢二先生(元・北九州市立大学教授、2024年3月退任)のプロジェクトがタイにプラントを建設することとなり、その案件を弊社が受注したことが北九州市立大学とのつながりのスタートです。以来、お付き合いが続いています。私自身は、北九州市立大学国際環境工学部、大学院と藤元研究室で学び、バイオディーゼルの研究プロジェクト(SATREPS)に関する特任研究員を経て、名古屋大学で助教を務めました。北九州市立大、HiBD研究所とのバイオジェット燃料のプロジェクトが始まることとなったタイミングで弊社に入社し、藤元先生から「研究するなら近くがいい、HiBD研究所の隣が空いているよ」と誘われ、研究の実験に対応できるオフィスだった学研都市の事業化支援センターに研究所を構えることになりました。当時は、私一人でしたが、今では6人体制となりました。

Q. 学研都市・北九州市拠点のメリットは何ですか

A. やはり大学とのつながりがあるということです。共同研究するにあたり先生方との打ち合わせをするにも、研究室や計測・分析センター(北九州市立大学)を利用するにも、徒歩圏内にあるのは便利です。私の学生時代を知っている方もいて柔軟に対応していただけるので、すごく助かっています。また、北九州市役所の方などと話をするにも、学研都市に研究所があるということで他地域の会社ではなく、北九州市の仲間みたいな感じで受け入れられることが多いです。企業の方には、普段から先生方と一緒に研究しているというと信頼されますし、何かあってもちょっと歩いて大学まで行けるというのは説得力が増します。これからは、まだ一緒に研究していない学研都市の先生たちともつながっていきたいですね。

Q. 環境エネルギーの強みとは

A. 大学の研究室が扱う(数グラム)よりも大きく、商業スケール(トン以上)よりも小さい、商業化へのステップアップに必要な中間のスケールの装置の設計、運用、触媒の研究開発と製造が自社で可能なところでしょうか。特に、北九州研究所は、触媒の製造に必要な設備を多く揃えており、日々のラボスケールの実験に必要な数グラムの量から、数百キログラムまでの製造が可能です。現在、福山の本社では主に廃プラスチックのケミカルリサイクル、北九州ではバイオ燃料に関する研究開発を進めています。

Q. 今後のビジョンを教えてください

A. 会社として廃プラスチックやバイオ燃料の事業は研究開発段階ですが、商業化することが一番の目標です。バイオジェット燃料を作るには国際規格のASTMインターナショナルが承認している8種類の燃料規格があり、我々はその1種類に準じて開発しています。研究所の新しいチャレンジとして、これまでのものとは別の規格・製法に関する研究にも着手しています。バイオマスや廃プラスチックを燃料や化学品の原料に変換する技術の開発においては、適応できる原料の幅を広げることと、得られる油の品質をいかに向上させることができるかが今後の課題です。私個人としては、若い人たちに入社してほしい。学研都市や戸畑の九州工業大学の卒業生とか含めて研究をやってみたいという人、次の世代を担う人の育成ができたらいいなと思っています。(2025年4月取材)

環境エネルギー株式会社

研究開発部 触媒開発主任 博士(工学) 谷 春樹

1990年代後半、学校で焼却炉禁止になったり、ノストラダムスの大予言があったり、地球温暖化といわれはじめがたり、環境問題に興味を持っていた高校時代を経て、北九州市立大学環境工学部(ひびきのキャンパス)の一期生(2001年)として入学。開発途中だった学研都市の近くにスーパーマーケットやホームセンターができたときは、生活がうるおうと喜んだそうです。現在、オフの日は、2児の父親として全力で子どもたちの成長を見守る日々を送っています。